坂元裕吾(2017年にグランプリ受賞)
見た作品『ファミリー☆ウォーズ』(18)
映画全体にずっと不穏な違和感を感じさせる。爺ちゃんの毛が入ったTENGAに、就活中に競馬場行ってる兄、アイドルの抱き枕を作る弟、腕が切断される姉、アイドルの姉に自演の応援リプしていた父、オウムみたいな宗教家、娘にビールを買いに行かせる親子、誰も片ずけない家族、夕飯は絶対一緒の家族、爺ちゃんに餅やこんにゃくゼリーを無理矢理食わせる家族。一番気持ち悪かったのは、言ったことを理解してんのか分かんない部下。「人を怒らせる方法」に出てきそうな奴で「ルール読んで立ってろ」と怒られたら日暮れまでずっと立ってるシーンはかなり不気味。家族の不穏な空気は決壊して物理的な戦いが始まる。この感じは『逆噴射家族』に似ている。クライマックスは家族全員が互いの腹をナイフで突き刺しまくる。血と臓器が溢れ出るエクストリームな展開は、もはやグロテスクでもなく超越している。
youtuber的な音楽の切り方や「いらすとや」を使った餅の説明、あえて綺麗な画像と音楽をのせるシーンなど今のネット感性で作っている人だと思う。セックスのシーンがAVみたいでエロかった。
中元雄(2018年にグランプリ受賞)
見た作品『デットコップ』(17)
主人公の警察官は仮面の女の虐殺を止めに行く。仮面女は高校時代のイジメの復讐で虐殺していて主人公の妹もこの女に殺されていた。主人公は太眉で眉間にシワを寄せ、サングラスかけて革ジャン着てグローブを着ける。拳銃はリボルバー。画面はノイズで劇伴は80年代BGMが鳴り止まない。とにかくアクションはフルパワー。リボルバーで撃ってピューと出る血しぶき、敵の腸をヌンチャクに、仮面女はバーベキューしてる同級生を刀で大虐殺。クライマックス、現場から離れた主人公はいい感じのBARのママに「行って来なさい」と言われ主人公は向かう。部下からリボルバーを受け取り体育館の屋上で仮面女と対決。拳銃で撃つと仮面女は刀で弾く!エモい展開が続く感じが最高。ただ勢いまかせで撮ってるのではなく回想を何個か挟むことでテンポよく見やすくなってる。
見た作品『一文字拳序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-』(18)
このタイトルがアナウンスされると会場から笑いが起こっていた。それだけのパワーがこのタイトルにある。金曜ロードショーパロディのアバンからスタート。主人公の漫画家と後輩が夜道に輩に絡まれる。その時、カンフー少年(一文字)が助けてくれたことでその3人は仲間となる。その輩のボスと知り合いの女の兄一文字の兄に空手の試合で殺されていた。その女は復讐のため改造人間を作り一文字の兄を殺す。カンフー少年は輩と改造人間との決戦に挑む。
一文字はハチマキにGジャンとGパン、手にはグローブ腰にはウォークマン。登場シーンにはがっつりスモークと照明。殴るとホコリが出て、壊れやすい自転車とイスがあり、4人同時に戦う。このこだわりはジャッキー・チェンそのもの。人の吹き飛び方はプロ級で、河川敷での対大人数戦に興奮、足を燃やしながら戦う一文字は圧巻*1。前作との比較では、『デットコップ』でハードボイルドな刑事をやっていた彼は弱々しい漫画家役(なんか前より太っている)になっている。描いてる漫画は『デットコップ』。BGMは抑えめになりカメラワークも本格的に。編集部や病院に見せるためのポスターが凝っていていい。
この2作を通して見えるものがある。復讐と決心だ。敵と味方どちらにも戦う理由があるから熱いのだ。『デットコップ』でママの声が決めてになったように『一文字拳』では病室で見た漫画の「諦めるな」というセリフが決めてになりクライマックスへ向かう。また、どちらもベタで覆われている。全体的に80年代アクションのパロディっぽいので見ているとあるある的な面白さがある。ベタゆえの快楽が全快で見ていて安心と気持ちよさがずっとある。そう考えると復讐と決心の展開はベタ要素として入れたのかなとも考える。エンディングのメイキング集を見たとき「最高だな!」と心から思った。
いつか金沢へ行って映画祭を体感してみたい。