昨年、12月に最新作『来る』が公開された中島哲也監督。世間的に認知され始めた『下妻物語』(04)から語る。『下妻物語』から『来る』まで計6本の映画を撮っているが作風で前期と後期に分けられる。前期は『下妻物語』、『嫌われ松子の一生』(06)、『パコと魔法の絵本』(08)。後期は『告白』(10)、『渇き。』(14)、『来る』と分けられる。
前期3本は明るい内容になっている。『嫌われ松子の一生』は本筋の話は暗いのだが、唐突なギャグやミュージカル、カラフルな画面があることで暗さを感じさせない。ただ、その装飾が強すぎて本筋の面白さが薄れている気がする。『パコと魔法の絵本』になると装飾はより過剰になり現実味も無くなってくる。舞台は日本だが、もはやそーゆーことでもない。過剰な色彩、派手な衣装、バラエティ番組のような効果音、カメラ目線やハイテンションな舞台の演技(本当に演劇をする展開がある)が詰め込まれている。後半、実写とCGアニメが融合する映像の怒涛感が半端ない。一本ごとに過剰になっていく前期3本で一番バランスがとれていたのは『下妻物語』だった。『下妻物語』は何度見てもいい映画だ。
後期3本は暗い内容になっている。前作から一気に作風が変わった『告白』、冒頭からフルスロットルな『渇き。』。『渇き。』が今のところ中島作品の中では一番グロテスクだ。初めから終わりまでハイテンショングロテスク映画なので、過激さがマヒして単調にもなってしまっている。『来る」は『渇き。』よりもバランスがとれた映画になっている。人間の嫌な空気感が漂い続ける前半とエクストリーム出血の後半という構成だ。事前情報入れずに見たので妻夫木が途中で真っ二つになったのは、ほんと驚いた(妻夫木が主人公だと思っていたので)。劇場から出ると頭がガンガンした。身がぎっしり詰まっているからだ。これはどの中島作品にも共通することでもある。
中島哲也に対する批判として「映像センスを見せつけたいだけ。<どうだかっこいいだろう>というドヤ顔が透けて見える。」と書く人がいる。でもそれって作品の批判になってないじゃん。作品が気に食わなからって人格否定してより貶した気になってるだけ。その“人格”も自分の中で勝手に想像して作り上げた「嫌なやつ」でしかない。作品を批判するなら作品内で完結させろやと思ってしまう。
中島哲也ランキング
①下妻物語
②告白
③渇き。
④来る